乳がんと診断されたら
- 2023.04.30
針生検を施行して、残念ながら乳がんの診断となった場合、手術や抗がん剤治療の出来る大きな病院へご紹介となります。多くの症例を扱っているがん専門病院や大学病院、職場やご自宅からのアクセス面で便利な病院、かかったことのある総合病院など選ぶ基準は様々です。
乳がんの診断となりとてもショックを受けられていると思いますが、一つ一つ出来ることを順番に行うことになります。紹介された病院の受診日までの時間がとても長く感じられ悩まれることもあるかと思います。しかし、一般的な乳がんの場合、診断から治療開始までの数か月の間にステージが進むことは考えにくいです。ステージが仮に思っていたよりも進んでいたとしても、待ち時間の間に進んだのではなく、クリニック受診時に既にその状態にあったと考えられます。
ステージに関しましては、しこりの大きさと脇の下のリンパ節に転移があるかないかで大まかに分かれます。例えば、しこりが2㎝以下で脇の下のリンパ節に転移がなければ、ステージはⅠ、しこりが2㎝以下でもリンパ節に転移があれば、ステージはⅡAに上がります。リンパ節転移については、クリニックでは超音波検査で脇のリンパ節に明らかな転移がないかを確認し、転移が疑われる場合にはリンパ節の細胞診を行うというところまでになります。
紹介先の病院では、マンモグラフィや超音波検査に加えて、MRIやCTといった検査を行い、乳房内での乳がんの広がりや周囲のリンパ節への転移の有無、他の臓器に転移していないかなどを調べます。また、乳がんの治療を行う上での体調を把握するために、心臓の検査や採血、胸部レントゲン検査などを行うことになります。それらの結果が全部出そろったところで、主治医からステージの説明や治療法の選択肢を説明してもらうことになります。
目まぐるしい状態になると思いますが、治療を何とか乗り越えて行けるように当院でのご提案のいくつかを書かせていただきますので、ご参考になれば幸いです。
・仕事はなるべく辞めないようにする
昨今では治療に対して理解を示す職場が多い様です。検査や治療で勤務できない時間があることを受け入れてもらえる可能性があります。両立は大変ですが、仕事の存在により気持ちを切り替えられ、がんの悩みから離れられる時間が出来ます。
・楽しい時間を持つよう心掛ける
治療のことで頭がいっぱいになりますが、家族や友人と楽しい時間を過ごす、趣味に没頭するなども気分の切り替えになるかと思います。
・なるべく運動する
安静にする必要はありませんので、なるべくお身体を動かして、手術や治療に備えていただくのがよいです。新たなスポーツを始められ、治療を継続しながら上達している方もいらっしゃいます。
・セカンドオピニオンを受けるか
治療に迷ったら、主治医にもう一度相談してみてください。どうしても納得できない場合はセカンドオピニオンを受けることも選択肢になります。
・妊娠を希望している方はどのタイミングで妊活を優先するか
妊娠を希望されている場合、治療方法の順番・優先順位を検討する必要があります。抗がん剤治療が避けられない場合、卵子や受精卵を凍結するかどうか等を考えなければなりません。
・遺伝子外来を受診するか
ご家族に乳がんや卵巣がんにかかってしまった方がいらっしゃる場合などで遺伝性乳がんを疑う場合は、遺伝子外来でカウンセリングや検査を受けることが出来ます。
・社会的サポートの活用
ネットの情報に左右されず、相談相手がいない場合は患者会に参加することをお勧めします。NPO法人等の活動の一環で、シッター制度を設けてくれているところもあり、子育てをしながらの治療のサポートを得る手段があります。例えば市川市の保育園でも、保護者が闘病中の場合は利用申請をすることが可能です。
「2023年版 患者さんのための乳がん診療ガイドライン」という本も参考になるかと思います。
考えることも多く大変な思いをされていると思いますが、当院では紹介先病院と連携を取りながら、患者様お一人お一人をサポートさせていただいております。簡単なことばかりではありませんが、治療がスムーズに進むよう一つずつ一緒に乗り越えていければ幸いです。