乳がん検診で要精査となってしまったら

  • 2023.04.11

全国の乳がん検診受診率は、人間ドック等の任意型を含めるとおよそ45%と言われています。韓国では64%、欧米では72~80%(厚生労働省の2015年の発表による)と国際的にもまだまだ低い状況です。子宮頸がん検診も大まかに同様の傾向にあります。女性のがんで1番多いのが乳がん、5番目に多いのが子宮がんです。乳がんは40代後半、子宮頸がんは30代後半と若い世代でピークになり、早期発見にて治る見込みのある病気のため、定期的ながん検診が有効です。

乳がん検診で要精査となってしまう方は、全国平均では5~6%程度と言われています。施設によって多少のばらつきはありますが、10人に1人くらいの方が要精査となることがあります。その時に「カテゴリー」表記がされる場合がありますが、これは「ステージ」ではありません。

「カテゴリーの定義」

カテゴリー1:異常なし

カテゴリー2:良性の可能性が高く、精査の必要無し

カテゴリー3:良性の可能性が高いが、悪性も否定できず

カテゴリー4:悪性疑い

カテゴリー5:悪性を強く疑う

※カテゴリー3以上が要精査

検診を受診して「カテゴリー3」の結果となった場合は、「良性の可能性を考えるが、悪性を否定できないので詳しい検査をした方が良い」という意味になります。

そして、要精査となってしまい医療機関を受診した場合でも、乳がんである確率は4%程度という数値です。初めて検査を受診された方で要精査となり、とても心配して当院を受診していただく患者様がいらっしゃいますが、悪性である確率は高いものではありません。ご不安になられる気持ちは重々理解できますが、先ずは早めに受診して検査を受けていただくほかありません。一方で、毎年引っかかっていらっしゃる方は、また今回も同じかなと放置してしまいそうになるかもしれませんが、新しい病変で引っかかっている可能性もありますので、必ずご受診いただきたいです。

マンモグラフィ検診で要精査となった場合、画像があれば見直しをします。画像をお持ちでない場合はどの箇所で引っかかってしまったのか、再度マンモグラフィを撮らせていただきます。そして視触診と乳房超音波検査を行います。全て保険診療で行います。

その時点で悪性か良性か診断をつけておいた方がよいしこりがあった場合は、針の検査を行います。のう胞という水袋は良性ですので、針の検査は必要ありません。線維腺腫という若い方に多いしこりは良性であっても大きくなる可能性があり、初回の指摘で針の検査を行うことが望ましいです。

針の検査には、

① 細胞診:細い針で細胞を取ってくる検査

② 組織診:局所麻酔をして少し太い針を用いて組織を取ってくる検査

③ 吸引式乳房組織生検:局所麻酔をして吸引式の針を用いて十分な量の組織を取ってくる 

があります。しこりの状態によって適切な各検査を施行し、病理医による顕微鏡の検査で確定診断に至ります。

病理診断で残念ながら乳がんの結果になってしまった場合は、手術や抗がん剤治療の出来る大きな病院にご紹介となります。昨年度当院で乳がんの診断がついた患者様はがん専門病院や大学病院等の十数か所の施設にご紹介させていただき、その後治療を受けて頂いています。治療が一段落しましたら、大きな病院と当院との「二人主治医制」で経過を見ていくことになります。